愛と欲望の螺旋(仮)

「パソコン画面で見ると、少し明るく見えてしまうので。この表紙のバックは、ライトグリーンより、パステルグリーンの方がキレイに見えますよ?」

「そうか。オレはそういうのはよく分からないけど、宝条さんがそう言うなら、全てお任せします。」


「そう言って信頼して任せてもらえるので、仕事が早く終わるんですよ。」

「信頼は、宝条さんの腕がないと出来ないことですよ?」


優しい笑顔を向けた。


いつも、この優しい笑顔を向けてくれる。


ここ数日、黒崎と一緒に生活して。


悪い人ではないんだとは思い始めた。


気を使ってくれているからかもしれないけど。


それでも、この優しい笑顔と変わらない。


小さな優しさがいたる所に散りばめられている。


例えば、帰ってくる時間。


湊さんのスケジュールを知っているらしくて。


湊さんより早く帰ってきたり、逆に湊さんが帰って来ない日は寝るためだけに帰ってくる。


何気ないことかもしれないけれど。


湊さんに襲われる心配もないし。


湊さんがいなくて、黒崎に何かされるんじゃないかって心配もしなくてすむ。


小さな優しさ。


それに、昨日は美味しケーキの差し入れ。


頭を使うには、砂糖が必要だからって。


脳みそは、砂糖が必要不可欠らしい。


些細なことだけど。


その些細な気づかいがたくさんあるから。


少しは黒崎への見方が変わってきた気がする。

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