人生はドラマである
「社長! ありました、書類!」
ママが差し出した封筒を受け取ると、一条さんはその中身を確かめた。
「あぁ、早乙女くん、助かったよ」
「すいません、昨日持ち帰ったのを忘れていたわたしが悪いんです。ご迷惑おかけしました」
「じゃ、また明日」
あくまで紳士な一条さんは、そう言うと僕の家をあとにした。
彼の言いかけた言葉が気にかかったけど、僕と一条さんのやり取りを、ママに悟られないように気遣ってくれたのだと思った。
――まぁ、彼の場合、ママの父親的存在なのかもな。
たとえ向こうにその気があったとしても、ママの様子を見る限り、恋愛感情がそこにあるとは思えなかった。