人生はドラマである
月命日の墓参りの日、僕は佐藤さんの車の後部座席から、いつになくじっくりと二人の様子を眺めていた。
すると……、
「そろそろ僕たちも吹っ切らないといけないなぁ」
と、なんだか切ない呟きが聞こえてきたんだ。
「美佳ちゃんのこれからの幸せも考えないとだな」
「佐藤くんには、ほんと感謝してる。
孝幸が亡くなってから、あたしがここまでやってこれたのも、佐藤くんが傍で支えてくれたからだよ」
「僕だって、美佳ちゃんがいなかったら、この悲しみを乗り越えられなかった。お互い様だね」
「今日は、ちゃんと彼に報告するつもり」
「大丈夫、孝幸だってわかってくれるさ。
だいたい、あいつが美佳ちゃんとツバちゃんを残して先に行っちゃうのがいけないんだ」
「そうだよ!
って、こんな風に笑って言える日がくるなんて思わなかったな。
佐藤くんもそろそろ新しい恋、探したら?」
「だよなぁ~、でも孝幸よりいい男って、なかなかいるもんじゃないしなぁ」
「フフッ……」
ママの楽しそうな笑い声だけが、不自然に車の中で響いていた。