人生はドラマである


そして僕はベッドの上で、僕の存在を確かめようともがいていた。


「ツバちゃん、ごめんね、内緒にしてて。

でもママ、ツバちゃんは絶対喜んでくれるって思ってたの。

だってツバちゃん、妹が欲しいって言ってたでしょ?」


まだ朦朧としてベッドに横たわる僕を、布団ごと抱きしめてママが言った。


「ママ……、僕ママが幸せなら、それでいいよ」


――人間、引き際が大切だよね?

僕は全面降伏を心に決めて、あっさり二人の幸せを願う立場に寝返った。


「あら、ツバちゃん、それってママのセリフよ。

ママはツバちゃんが幸せなら、それでいい。

結婚は二の次。

一番大切なのは家族だもん」


「って、美佳さん、僕はのけ者ですか?! ひどいなぁ」


「雅也さんのことは愛してるけど……、

旦那の代わりは見つかっても、ツバちゃんの代わりはいないから……」


「お腹の子は、僕の子ですよ」

「わかってるけど……」

「僕はいなくてもいいと?」

「そうじゃないけど……」


僕を抱きしめるママの腕は震えていた。

どう見たって、ママの強がりだ。

でも……、

こう見えて、ママには結構頑固な一面がある。


「ツバサくん、お願いだ、僕を君たち家族の仲間に入れてくれないか?」


――どうやら形勢は僕の方に傾いている?

引くに引けない二人の状況を、打破する鍵は僕一人に委ねられた?


「ママ……、僕、パパってどんなもんだかわかんないけど、妹は欲しいな。

結城さんが僕からママをとるんじゃなくて、僕たちと家族になりたいっていうなら入れてあげてもいい」


「ツバちゃん!!」

「ツバサくん!!!」


僕を抱きしめるママを、結城さんがさらにその上から抱きしめて、僕は超苦しくて死にそうだった。

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