龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
何?

今の何?


圭吾さんは閉じていた目を開いた。


気圧されそうな眼差しの強さに、危うく後退りしそうになった。


寸前で堪える。


圭吾さんの中に龍がいる――

強く、烈しい龍が

でも、怖くない

これも圭吾さんの一つの面だから。


圭吾さんはわたしに向かって軽く頷き、要さんの横に立った。

わたしの髪を包んだ懐紙を左手の指で挟み、両手を音高く一拍打ち鳴らす。


「開け」


その言葉は床を這い、岩を震わせた。


「よし! そのまま開け!」

要さんがそう言って、両腕に力を込めた。


軋むような音と共に岩に亀裂が入り、緑色のモノが次から次へと溢れて来た。

指先が見える。

形のいい長い指、男の子にしては華奢な悟くんの指だ。

要さんは岩の隙間に肩を入れ、悟くんの手を、腕を、肩を、渾身の力を込めて引っ張り出した。

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