龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
それは圭吾さんの手の中で引っ張られ、捻られて、魔法みたいに形が変わった。


「はい。ここの部分がハサミになってるから」


ドライバーや缶切りもあるみたい。


わたしはハサミで髪の先を一房切って、圭吾さんが広げる懐紙の上に置いた。

圭吾さんはそれを丁寧にたたんだ。

わたしがハサミを渡そうとすると、圭吾さんは後ろを振り返った。


「要、これ鉄か?」


「ああ、ステンレスだ」


「じゃあ、これは志鶴が預かっていて。魔除けになるから」

圭吾さんは、わたしに金属の塊を持たせた。

「少しじっとしていて、キスするからね」


へっ?


圭吾さんが体を屈めた。


「唇、少し開いて」


言われた通りにする。


唇がそっと重なって離れる直前に、圭吾さんが息を吸った。

軽く目眩がした。

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