Liars' clovers
 ぼくがクローバーを見た丘は村のなかでも特別陽当たりがいいところだった。

 しかし、この森は木々が邪魔をしてなかなか陽の光が届かない。

 いまここに咲いているのは、少し遅れた冬の花だ。


 森にはまだ冬がいるから多年草であるクローバーはまだ咲かない。ぼくはそれを知っていた。

 それでもわずかな奇跡を求めてここに来た。

 彼女に四つ葉を見つけさせてあげたかったから。

 でもやはり奇跡は起こらない。



 ──まだ探すの?

 繰り返される移動の途中、一度だけ彼女に訊いた。

 弱音を吐く機会を、あきらめるきっかけを与えたつもりだった。
 けれど返ってきたのは

 ──だってまだ見つけていないもの。

 普段の彼女からは創造もつかない凛とした声。

 きっぱりと言い切る彼女に少し面食らったが、そんな驚きもすぐに消えた。

 理由は彼女の表情につきる。

 きゅっと唇をむすび、瞬きひとつしないことで、溢れそうになるものを堪えているのが見て取れた。


 それから二度とその質問はしていない。

  ただひたすらにクローバーを探し続けた。

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