Liars' clovers
 しかしクローバーは見つからない。

 そもそも薄暗いこの森には咲いていないのだ。

 ──幸せの四つ葉ってどんな風に咲いているのかしら。

 ふと彼女の言葉がよみがえった。

 この森のように薄暗い部屋の中で、外をあまり知らない彼女が呟いた言葉。

(……外を知らない?)



 そうだ。彼女は虹を知らなかった。彼女はカエルを知らなかった。

 きっと彼女は知らない。『クローバーがどんなものなのか』。

 その証拠に、彼女はずっとクローバーすら咲いていない場所で四つ葉を探している。

 つまり、知識として知ってはいても実物を見たことがないのだ。

 ぼくは一瞬のうちにおそろしく卑怯なことを考えた。

 ……そして、それを実行することにした。

「──こっちに来て」

「どうしたの? まさか……」

 顔を輝かせる彼女に向かってうなずく。

 心の中で謝罪を述べて。

「……見つけたよ、四つ葉のクローバー」



 本葉と双葉が同じくらいの大きさに育った、名前も知らない植物をぼくは指さした。
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