Liars' clovers
 村に帰るとちょっとした騒ぎになっていた。

 ぼくらが家を出た後すぐに彼女の母親がエミルの不在に気付き「娘が誘拐された」と騒いだらしい。

 騒ぎを聞き付けた村の大人たちが数人集まっていたところに、ぼくらが現われたのだった。

 当然、大人たちはエミルを勝手に連れ出したぼくを責めたが、母親はとにかくエミルの体調が心配らしく、周りに礼を言うとすぐに彼女を連れて帰った。

 覚えきれないほどのお小言を聞かされている最中、慌てた様子の母さんが駆けてきた。


 エミルの母親と同じように丁寧に頭を下げ「家でよく言っておきます」とぼくの手を引いてその場をあとにした。

 しかし家に帰っても母さんは説教ひとつしない。

「明日もあの子のところに行ってあげるのよ。……絶対ね」

 ぼくの頭を優しく撫でてそう言っただけだった。



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