Liars' clovers
 ずいぶん迷ったが、結局今日もエミルの部屋の前に来ていた。

 でもなかなか窓を覗き込む勇気がでない。

 嘘をついた罪悪感が、彼女に会うのをためらわせた。

「──来たのね」

 突然かけられた声に顔をあげるとエミルが窓から顔をのぞかせていた。

 その眼差しはどこまでもやさしい。

 ぼくは観念して窓に近づいた。

「うん。あの……はい、これ」

 今日は丘に咲いていたクローバーの花を持ってきた。

 償いのつもりでもあり、ここまできて彼女が本当にクローバーを知らないのか確かめるつもりでもあった。

 ずるい自分にとことん嫌気がさす。

 少ししおれかけた花を、エミルはこわれものでも扱うかのようにそっと受け取った。

「ありがとう」

 彼女は笑う。ぼくがひそかに安堵しているのを知らずに。

 ぼくの身勝手な嘘に騙されて。


「本当にありがとう。……きれいなクローバーね」



 その言葉を聞いた瞬間、全身が硬直した。
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