Liars' clovers
「これ……」

 なんとか出した声は掠れていた。

 口の中がからからに渇いている。

 息が苦しく、さっきから心臓の音がうるさい。

 一方で、こんなぼくは彼女の目にさぞ可笑しく映っているんだろうな、と冷静に認識している自分がいた。


 ──責められるだろうか。
 いや、すでに呆れられたのかもしれない。
 今すぐここから逃げ出してしまいたい。

 判決を待つ罪人のような気持ちでその場に立ち尽くしていた。

 そんなぼくを気にした様子はなく、穏やかな声音でエミルは話す。

「ずっと前に四つ葉を欲しがったとき、パパが取ってきてくれたの」

 そういえば、昨日そんな話を聞いた気がする。


 ──パパと同じことを言うのね。


 つまり彼女の父親も、ぼくと同じようにエミルに四つ葉のクローバーを送ろうと考えたのだ。

 結果的に彼はプレゼントに成功し、ぼくは失敗したけれど。

「……でもね、それを持っててもダメだったわ。幸せなんて来なかった」

 エミルは微笑んだ。その笑顔がなぜか悲しい。


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