ナツメ
そして気付く。
飼われるってこういうことか。

彼の言うことだけを聞いていればいいんだ。
わたしは、なにもしなくていいし、なにも考えなくていいんだ。

そう思ったら、それが物凄く素晴らしく素敵なことに思えて、自然と唇が持ちあがるのを感じた。


そして、ふと思う。

動くな。
なにもするな。
じゃあ呼吸は? 
していていいのだろうか。

止めろと言われたら、彼がいいと言うまで止めることすらできる気がした。

座った位置からはナツメの背中が見える。

背が高い。
彼よりは高いだろう。

茶色い柔らかそうな髪。
手も足も長い。
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