ナツメ
彼は言った。


『勝手に死んだりしないで』

『死にたいならぼくが殺してあげるから』


冗談じゃない。
愛する男にそんなことを言われて、はいそうですかと殺してもらっていいはずがない。

わたしは彼を殺人犯にしたいわけじゃないし、そんなことで一生を棒にふって欲しくもなかった。

だから勝手には死ねないし、彼に殺してもらうわけにもいかない。

結局は生きなくてはいけないのだ。
生きていないと。
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