本気の恋の始め方
「だけど優秀、なのよねぇ、確かに。むかつくことに」
そういう鮎子さんの表情は、どこか自慢げにも見える。
「ふふっ」
「なに?」
笑った私に、不審げに視線を向ける彼女。
肘をつくのをやめて私の真意を探るように見つめる。
「鮎子さん、ちょっと気に入ってるんじゃないですか、その、彼のこと」
プライベートはいっさい謎に包まれている鮎子さんから、男の人の話が聞けるって珍しいから、つい冗談ぽく言ってしまった。
「――や、やだぁ。いくつ下だと思ってるのよ、あの子まだ十八なんだから……生意気だし。かわいくないしっ……!」
鮎子さんはしどろもどろになりつつ、スーツのポケットから薄い手帳を取り出すと、
「あーえっと、会長の今日のスケジュールは……」
なんて、誤魔化すみたいにつぶやき始めた。