本気の恋の始め方
「――じゃあ私戻りますね」
鮎子さんの追求から逃げるように、私はトレイを持ってそそくさと食器返却口へと向かう。
途中、マーケティング部のみんなが固まっているテーブルがあって、会釈しながら横を通ると、
「三木さん」
と、男性社員に呼び止められた。
「はい」
「芙蓉堂さんが14時から第三会議室に来られるから。資料を10部コピーして配布お願いできるかな」
「わかりました。今朝メールでいただいた分ですね」
「そうそう。じゃあ、頼むね」
「はい」
テーブルの輪の中には千野君もいた。
彼はごく自然に私を見上げ、なんだかまぶしそうに私を見上げる。
その瞳の輝きに、胸が一瞬、きゅっと苦しくなった。