本気の恋の始め方

閉める瞬間、ドアの向こうに人影が見えたけれど、さすがに中までは入ってこれないみたいだった。


私は部屋の一番奥までズカズカと小走りで向かい、その周辺に人がいないことを確かめて、座り込む。




五分、十分……。

涙は完全に引っ込んでいた。



大丈夫。もう、普通の顔、出来てる……。



ゆっくりと息を吐いてドアを開け、左右の廊下を確認したけれど、るうくんの姿はなかった。


帰ったんだ……。


ほっとして、私はなに食わぬ顔でマーケティング部へと戻り、主任のデスクに一声掛ける。




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