本気の恋の始め方
「しっと……?」
傷つけたから彼は「怒ってる」んだって思った。
だから腹いせに、彼は私を傷つけようとしてるんだって思ったのに。
「そうですよ。潤さんが‘るうくん’のこと好きだって、知ってて側にいるって決めたのに。いざ本人を目の前にしたら、そんな理性が吹っ飛んで……怖くてたまらなくなった」
「怖い……」
「怖いよ。潤さんがたった一人好きになった男でしょう。玉砕覚悟で抱いて欲しいと思った男でしょう……? 会わない間も大事に思っていた人が目の前に現れたら、俺なんか……」
細く息を吐いて、それから千野君はゆっくりと顔を上げた。
まるで息をするのも苦しいみたいに私を見つめて。
私の上半身を包み込むように抱きしめる。
だけどそれは「抱きしめる」というよりも
「しがみつく」みたいな
どこかせっぱ詰まった気配をまとっていて……。
なんだか胸の奥が、ぎゅっと苦しくなった。