本気の恋の始め方

「しっと……?」



傷つけたから彼は「怒ってる」んだって思った。

だから腹いせに、彼は私を傷つけようとしてるんだって思ったのに。



「そうですよ。潤さんが‘るうくん’のこと好きだって、知ってて側にいるって決めたのに。いざ本人を目の前にしたら、そんな理性が吹っ飛んで……怖くてたまらなくなった」

「怖い……」

「怖いよ。潤さんがたった一人好きになった男でしょう。玉砕覚悟で抱いて欲しいと思った男でしょう……? 会わない間も大事に思っていた人が目の前に現れたら、俺なんか……」



細く息を吐いて、それから千野君はゆっくりと顔を上げた。


まるで息をするのも苦しいみたいに私を見つめて。

私の上半身を包み込むように抱きしめる。




だけどそれは「抱きしめる」というよりも

「しがみつく」みたいな


どこかせっぱ詰まった気配をまとっていて……。


なんだか胸の奥が、ぎゅっと苦しくなった。





< 147 / 446 >

この作品をシェア

pagetop