本気の恋の始め方
ベストも留めたところでやっと一息。
これで大丈夫だ。
安心しつつ振り返ると、
「――すみません」
千野君が床にぺたんと手をついて土下座していた。
「ちっ……千野君、ちょっと!!!」
生まれて初めて見た土下座に、さあっと血の気が引いた。
慌てて彼の肩に手を置いて、顔を上げさせようとしたけれど、かたくなに土下座を続ける千野君はびくともしない。
「やめて、千野君。頭を上げてっ……」
「そういうわけにはいきません」
「いや、だって、今日のことは、その、私も、いっぱいいっぱいで、千野君も、そうだったでしょ? それに、本気で無理矢理するつもり、なかったでしょ?」
「だけど、絶対に許されることじゃないから。潤さん怖がらせて、泣かせて……」
「わかってるわよ、だけど千野君、私に言ってくれたじゃない!
理性でわかっていても止められない。感情と理性の間で不安定に揺れて、苦しんで、それが恋だって!」
「――」
私の言葉に、黙り込む彼。