本気の恋の始め方
「三木潤といいます」
「初めまして。Guido Fawkesのオーナーの辻相楽(ツジ サガラ)です。ぼっちゃまから噂はかねがね……なるほど、透明感のある、素敵な女性です」
透明感だって……。
冗談でお世辞100パーセントだってわかってるのに、真正面からにっこりと微笑まれると、頬に熱が集まるのがわかる。
やだ、本気にとってるって思われたらどうしよう……。
両手で頬を挟んでおろおろしていると
「はい、終了。挨拶はもういいって。あっち行って」
千野君が相楽さんを手で押して、彼を遠ざけようとする。
「チハヤ。邪険にしなくても、僕は世界一安全な男だって知ってるだろ?」
彼はクスクスと笑いながら私を見て「ゆっくりしていってくださいね」と目を細め、それからテーブルからカウンターの中へと戻っていく。
「なんだか不思議なひとね」
現実味がないというか。
生活感がないというか。
不思議な感じ。
「そうですね。もう十年の付き合いになるけど、相楽のこと全部知ってるわけじゃないです。だけどとても信用している、大事な人でもあります……」
少し懐かしそうな顔をする千野君。