本気の恋の始め方
「家族みたいな?」
「――はい」
彼は慎重にうなずき、それから目を細め、なんだかとてもまぶしそうに私を見つめた。
「どうしたの?」
「あ、いいえ」
それからまもなくして、カウンターのほうがざわざわし始める。
なんだろう……。
「潤さん、今日は運がいいですよ。要(カナメ)がやるみたいです」
千野君はとても嬉しそうに微笑んで、私と同じようにカウンターに目線を向けた。
「カナメ?」
「‘赤と黒の蜘蛛’(アカトクロノクモ)のチェリスト、一柳要(イチヤナギカナメ)です」
「‘赤と黒の蜘蛛’……って聞いたことあるかも。高天原(タカマガハラ)大学の学生が主宰してるグループだって」
「ええ、そうです。俺の後輩でもあります」
‘赤と黒の蜘蛛’は、楽器、歌、踊り、ミュージカルにお芝居、主要メンバー四人を核にして、演目ごとにメンバーを追加
プロの俳優やミュージシャンとも、既に何度もコラボしていて、大成功を納めているパフォーマンスグループなんだとか。