本気の恋の始め方
「アコーディオンに似たあの楽器は、バンドネオンというんです。鍵盤がなくて代わりにボタンがあるでしょう? 蛇腹を引いたときと押したときで、音が変わるんです」
バンドネオンなんて楽器の名前、初めて聞いた……。
「千野君、物知りね」
「え、いや、彼らとは顔見知りなので、逆に教えてもらったことなんですよ」
はにかむように微笑む。
やがてバンドネオンを抱えた金髪の男の子が、綺麗で長い指の真ん中を立てて見せ
「お前たち全員、イかせてやる!!」
と叫ぶと同時に、ワァッと空気が揺れるほどの歓声があがった。
誰でも聞いたことのある、あの有名な‘リベルタンゴ’
でもかなり、アレンジされてる。
知っているものよりもずっとアップテンポで、追いかけられているような、追いかけているような
けれどそれが癖になるような、高揚感。
リベルタンゴから、鮫。赤と黒。
無伴奏含めてたった四曲の彼らの即興演奏が終わる頃には、体が震えるほど感動していた。