本気の恋の始め方
「まだ、頭の中で音が響いてる」
Guido Fawkesを出た帰り道、千野君とゆっくりと夜道を歩く。
部屋の前まで送ってくれるって言ったから、お言葉に甘えることにした。
心の奥底で、それを期待してたかもしれない。
隣を歩く千野君の存在に、落ち着いている自分がいる。
この気持ちって……。
「今度ライブ行きます?」
「え、なにっ!?」
一緒に並んで歩いているのに、ぼんやりとしていたのが丸わかりなリアクション。
失礼にも、派手に聞き返した私を見て千野君は苦笑する。
「‘赤と黒の蜘蛛’のライブ、行きますか?」
赤と黒の蜘蛛のライブ……
「行きたい……!」
謝りもせず即答してしまった。
「ちょこちょこやってるんで。じゃあチケット取りますね」
「あ、うん。嬉しい。楽しみにしてる……」
「はい」
そしてまた、無言で引き続き並んで歩く私と千野君。
アパートへの道はほとんど人が通っていなくて、静かな夜だった。