本気の恋の始め方
気がついたらホテルのエントランスを足早に出ていた。
千早のバカッ……!!!
我慢しているはずなのに、目に涙が浮かぶ。
京都の洗練された街並みが淡くにじんでいく。
たくさんの人々が行き交う駅構内の端っこのベンチに座り、バッグからハンカチをつかみだして目元を押さえ、ゆっくり深呼吸を繰り返す。
それで少しは落ち着くかと思ったら、次第に膨れ上がってくるのは、一刻も早くここを立ち去りたいと願う気持ちだけだった。
気力を振り絞って改札へと向かう途中、バッグが震え始める。
まさか、と思いつつ携帯を取り出すと、千早からの着信だった。
きっと、私のメールを見たんだ……。
でもどんな顔をして取ればいいの?
千早は私があそこで二人の様子を見ていたなんて、みじんも考えてない。
この電話を取れば、何事もなかったかのように「会おう」って言うんだろう。