本気の恋の始め方
「あら、もう帰ってきたの!」
「あーうん。ちょっと近くでお茶しただけだから」
マンションのドアを開けたお母さんに顔を見られないよう、うつむいたまま靴を脱ごうとすると
「じゃあ、ケーキ買ってきて」
と、お財布を渡される。
「え」
「塁くんもうすぐ来るのにケーキ買うの忘れてたのよね~」
断ろうと思っても、キッチンのほうへと戻っているお母さんを呼び止めてまで言い返せなくて……ケーキね……
すごすごまたマンションのエレベーターで一階に降りると、
「潤」
と私を呼ぶ声。
一瞬、千早かと心臓がはねる。
だけど私を呼んだのは、今まさにオートロックに手を伸ばしていたるうくんだった。
「塁……」
「どっか出かけるのか?」
るうくんが私の格好を見て首を傾げる。