主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
夕方になった頃にはほとんどが片付き、備え付けの高価な家具に着物や帯などを直してあちこち部屋を見て回った若葉は、朔と一緒に縁側に座って息吹が作ってくれたおはぎを食べていた。


「朔ちゃん遊びに来てくれるよね?このお家広いから、今度から泊まっていけるよ」


「…いい。俺もお前ももう大人だから、何かあったらまずいし」


「何かあったら…って何が?朔ちゃんが何かするの?」


「一応俺も男だし。お母様から“お父様みたいに女遊びするな”って口をすっぱくして言われてるから」


…若葉から見ても堅物に見える主さまが、銀みたいに女遊びをしていたのかと思うとそれが全く想像できず、口をぽかんと開けた。


「朔ちゃんも女遊びをするの?…それはちょっといやかも。朔ちゃんを避けちゃうかもしれない」


「し、しないって言ってるでしょ。それより…ぎんの様子がなんだかおかしいから気を付けて。俺もまめに様子を見に来るから」


「?うん、わかった。朔ちゃん、今日も百鬼夜行について行くの?」


おはぎを食べ終えた朔が腰を上げたので、しっかりと戸締りをした若葉は銀たちを百鬼夜行に送り出すために主さまの屋敷へと戻る。

朔は時々主さまと共に百鬼夜行について行くことが増えて、百鬼たちからの信頼も厚く、力のみを信じる彼らにすでに太鼓判を押されている。

これ以上朔が離れて行ってしまうと寂しいし心細いが…朔になら百鬼夜行を継いで、人と妖との懸け橋になってくれると信じてもいた。


「私が生きてる間に百鬼夜行を継いでね。朔ちゃんが先頭に立ってみんなを率いてる姿が見たいから」


「…ん。ぎんが百鬼に残ってるかはわからないけど、もし百鬼に残るならこき使ってやる」


朔が二面性を持っていることを知っている若葉は、楽しそうに笑っている朔と手を繋いで屋敷に戻ると、すでに庭にはわいのわいのと大勢の百鬼が集まっていた。

その中には主さまと話していた銀の姿があり、若葉は遠目から銀を鑑賞してみた。


…背が高く、頭の上にはふわふわの白い耳と、すらりとしたお尻にはふわふわの尻尾。

髪も銀に近い白で、普段着も好んで白の着物を着ていることが多い。

そして…あの濃紺の瞳に見つめられると、なんだかちょっと身体がむずむずしてしまう。


その正体はまだわからない。

知ってしまえば何かが変わってしまう気がしていた。
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