主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
それからの生活は、銀の挙動不審っぷりは若葉が首を傾げるほどにおかしいものだった。

毎日百鬼夜行には出かけるが、明け方帰って来ると、必ずといっていいほど添い寝をして、べたべた触ってくる。

一緒に食事を摂っている間もちらちら盗み見をしてきては目が合うと顔を背けるし、首をひねる行動ばかりだ。


「ぎんちゃん…どこか悪いの?」


「ん?いや、どこも悪くはない。…お前こそ、俺と暮らしていて何か感じるものはないのか?」


濃紺の瞳でじっと見つめられた若葉は、少しだけ鼓動が跳ね上がりながらも、首を振った。

…この想いを気付かれてはならないのだ。

いや…想いと呼べるほどに銀に惚れているかどうかもまだよくわかっていないのに、なんだか妙なことを言われて答え様がなくなる。


「何か感じるものって…なに?ぎんちゃんと一緒に居てどう思うかってこと?」


「まあ、そうなんだが…何も感じないのならいい」


――言葉の節々に期待させるような色がこもり、女たらしで女遊びの大好きな銀が自分を選ぶはずはないと固く信じている若葉は、銀に告白して振られる想像だけで胸が痛くなり、湯呑を乱暴にちゃぶ台の上に置いた。


「ぎんちゃんこそ、私と一緒に居て何か感じるものでもあるの?私だけ答えるのはずるいよ、卑怯だよ」


「お前と?…お前と一緒に居ても、何か感じるはずがないじゃないか。早く嫁入り修行でもして女を磨いて嫁いで俺を安心させろ」


そうは言ったものの、自分の言葉で傷ついてしまった銀は、ぎゅっと尻尾をつねってきた若葉を睨んだ。

互いが互いを探っていることすら知らず、若葉の鼻をつまみ返すと、徐々に顔が赤くなってきた。


「ぎんちゃん息ができない」


「何故怒っているんだ?お前こそまだ答えていないぞ。俺と一緒に居てどうなんだ?嬉しいのか、楽しいのか、それとも…嫌なのか?」


「…嫌じゃないよ。でも早く嫁に行ってほしいって思ってるの?しばらくお嫁には行かないでいいって言ったでしょ?」


「言ったが、いずれは嫁ぐだろうが。晴明のところのように、俺に孫でも見せてくれたら、ここまで立派に育てた甲斐があったものだと満足するだろうな」


…銀はやはり自分のことを“娘”としか思っていない。

それを再確認した若葉は、きゅっと唇を噛み締めて、何も考えないようにしようと台所に立った。
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