主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
丙から避けられてしまった若葉は、とぼとぼとした足取りで庭に戻った。

銀が雑草を引き抜き、息吹が箒で枯葉や引っこ抜いた草を集めていたが――それっきり手が付かなくなってしまった若葉は、縁側に腰を下ろして俯いた。


「丙に何を言われたんだ?あんな心の狭い男と一緒になろうというお前の気が知れん。考え直した方がいいんじゃないのか」


「…ひのえちゃん…怒ってた。私がお引越ししたことを言わなかったから?」


「俺が知るか。お前もこっちに来て手伝え。いつまで経っても終わらないぞ」


「銀さん…若葉がお嫁に行くのが嫌なんでしょ?どうして嫌なのか…もう知ってるんでしょ?」


隣に移動してきた息吹が含み笑いをしながらこそっと声をかけてきたので、むっとした銀はいらいらしながら尻尾を小刻みに動かし、眉を潜めた。

…最近腹の内を探られることが多く、どうにも自分と若葉の中を勘ぐる者が多い。

確かに認めたくない想いが芽生えているのは確かだが…感情に流されるがままに、若葉とどうこうなることは避けたい。


「お前が俺の何を知っていると言うんだ?少し俺と親しくなったというだけで、馴れ馴れしくするな」


「あ…ごめんなさい…」


――妹の葛の葉に雰囲気が似通っている息吹がしゅんとなってしまうと、密かに慌ててしまった銀がどう謝ろうかと口を開いたり閉じたりしていた時、主さまが息吹を迎えに来た。

息吹に今のことを言われてしまうと主さまから制裁があることだけは確かなので、小さな声で一言だけ、謝った。


「…すまない、言い過ぎた」


「ううん…私こそごめんね。若葉には幸せになってほしいから…ただそれだけ。お節介は迷惑だよね、もうしないから」


お節介を焼かないと息吹が言い、そうなると相談できる者が減ってしまう。

主さまの元へ行こうとする息吹の背中に手を伸ばして引き留めようとした時、主さまの瞳が不気味な眼光を発した。

思わず銀が立ち止まると、まだうなだれている息吹の肩を抱いた主さまはそのまま何も言わずに去ってしまった。


「…息吹…」


「私…お節介しすぎたみたい。もうそっとしておいた方がいいのかも。子供たちのことがおざなりになっちゃってごめんね。これからは…子育て頑張るから」


「お前はお前らしくしていればいい。だが、見かねた時は俺が出るからな」


鼻を啜った息吹を労わるように頭を撫でた主さまは、銀と若葉の悲恋に胸を痛めながらも、そっとしておこうと決めていた。
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