主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「ぎんちゃんひのえちゃんをいじめたでしょ」
「お前こそ俺に何か隠し事があるんじゃないのか」
掃除も片付き、相変わらず気まずい雰囲気が流れながらも家に入って火の入った囲炉裏の前で茶を飲んでいた2人は、腹の探り合いをしていた。
丙は心配してきてくれたのに、満足に謝罪もできることなく帰らせてしまったことを若葉は悔いていた。
また若葉を心配してきた丙に対して、嫉妬心にかられて早くこの場から追い出したかった銀は、自身の心境をまだ認められずにいた。
「もういいよ、今度ひのえちゃんに会いに行くから。それよりぎんちゃん、百鬼夜行…」
「さっき猫又が今夜の百鬼夜行は遅れると言いに来た。…俺のせいだ」
息吹が悲しそうな顔をして屋敷を後にしたことは若葉も気にしていた。
いつも明るい人なので、あんな風にしてしまった銀を詰りたかったのだが…銀はすでに罰を受けているような顔をしていた。
「ぎんちゃん…大丈夫?」
自嘲気味に笑った銀に若葉が手を伸ばそうとした時――背筋をぞわっと這い上がる寒気のようなものに襲われて、身を竦ませる。
一体何が起きたのかという顔で銀を見つめたが、銀は冷や汗をかきながら腰を上げて庭に出た。
「若葉、障子を閉じろ。俺はもう行く。戸締りを忘れるな」
「ぎんちゃん…どうしたの?何が…」
「…朔が来た。十六夜の代わりに俺に制裁を食らわせるつもりだな」
――振り返らずに強い口調で言った銀に従った若葉が障子を閉めると、庭にはいつの間にか無防備状態に見える朔が立っていた。
両腕をだらりと垂らして一見攻撃をしてくるようには見えないが…明らかに身に殺気を纏い、辺りには鬼火が飛び交う。
朔は半妖だが、純粋な妖よりもはるかに大きな力を持って生まれてきたので、百鬼たちは朔が半妖であることを忘れているが、まだ若い朔の力は今後さらに膨らみ続け、主さまをも凌駕するかもしれない。
「わかっているなら逆らうな。お母様を泣かせた罪は重いぞ。お父様がここに来ないだけありがたいと思え」
「…お前たちは本当に息吹が大好きだな。俺とて後悔はしているが、腹を探られて不愉快になったのは確かだ。お前も十六夜も、俺と若葉に干渉しすぎじゃないか?」
「お前が若葉に惚れているからだ。今までよく“人と夫婦に”と言えたものだな。今にも若葉を襲いそうになっているのはお前じゃないのか?」
銀と朔が睨み合う。
そして若葉は…障子越しにその会話を聞いていた。
「お前こそ俺に何か隠し事があるんじゃないのか」
掃除も片付き、相変わらず気まずい雰囲気が流れながらも家に入って火の入った囲炉裏の前で茶を飲んでいた2人は、腹の探り合いをしていた。
丙は心配してきてくれたのに、満足に謝罪もできることなく帰らせてしまったことを若葉は悔いていた。
また若葉を心配してきた丙に対して、嫉妬心にかられて早くこの場から追い出したかった銀は、自身の心境をまだ認められずにいた。
「もういいよ、今度ひのえちゃんに会いに行くから。それよりぎんちゃん、百鬼夜行…」
「さっき猫又が今夜の百鬼夜行は遅れると言いに来た。…俺のせいだ」
息吹が悲しそうな顔をして屋敷を後にしたことは若葉も気にしていた。
いつも明るい人なので、あんな風にしてしまった銀を詰りたかったのだが…銀はすでに罰を受けているような顔をしていた。
「ぎんちゃん…大丈夫?」
自嘲気味に笑った銀に若葉が手を伸ばそうとした時――背筋をぞわっと這い上がる寒気のようなものに襲われて、身を竦ませる。
一体何が起きたのかという顔で銀を見つめたが、銀は冷や汗をかきながら腰を上げて庭に出た。
「若葉、障子を閉じろ。俺はもう行く。戸締りを忘れるな」
「ぎんちゃん…どうしたの?何が…」
「…朔が来た。十六夜の代わりに俺に制裁を食らわせるつもりだな」
――振り返らずに強い口調で言った銀に従った若葉が障子を閉めると、庭にはいつの間にか無防備状態に見える朔が立っていた。
両腕をだらりと垂らして一見攻撃をしてくるようには見えないが…明らかに身に殺気を纏い、辺りには鬼火が飛び交う。
朔は半妖だが、純粋な妖よりもはるかに大きな力を持って生まれてきたので、百鬼たちは朔が半妖であることを忘れているが、まだ若い朔の力は今後さらに膨らみ続け、主さまをも凌駕するかもしれない。
「わかっているなら逆らうな。お母様を泣かせた罪は重いぞ。お父様がここに来ないだけありがたいと思え」
「…お前たちは本当に息吹が大好きだな。俺とて後悔はしているが、腹を探られて不愉快になったのは確かだ。お前も十六夜も、俺と若葉に干渉しすぎじゃないか?」
「お前が若葉に惚れているからだ。今までよく“人と夫婦に”と言えたものだな。今にも若葉を襲いそうになっているのはお前じゃないのか?」
銀と朔が睨み合う。
そして若葉は…障子越しにその会話を聞いていた。