主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
まだ腹の虫が収まらない丙が布団の中で眠れぬ夜を過ごしていた時――障子を隔てた庭から足跡のようなものが聞こえた。
こんな太陽も昇っていない時間から出歩くのは妖だけなので最初は放っておいたのだが…何者かの気配は去る様子がなく、恐る恐る障子を少しだけ開いて庭を確認した丙は、自分自身の身体を抱きしめるようにして庭に立っていた若葉を見つけて絶句した。
「若葉!?一体どうし……ずっとここに立ってたのか!?早く中に入って!誰か、火鉢と風呂の用意を!!」
すぐに使用人が起きて来て慌ただしく家に明かりが灯る中、丙は裸足で庭に降りると若葉の冷え切った肩に触れて思わず手を離した。
まるで低温火傷をしたかのように冷え切りながらも、若葉は一言も話さない。
ただ寒さで歯の根がかみ合わずにがちがちと音がして、きっと何か一大事が起きたのだと予想した丙は、無言のまま若葉を部屋の中へと導いた。
「どうした?会いに来てくれたのは嬉しいけど…会いに来たいわけじゃなくてここに来たんだろ?」
「ひのえちゃん……今日から…ここに…置いてもらってもいい…?私…家を出て来たの。ぎんちゃんとはもう暮らせないの。まだ私を…お嫁さんにしたいって思ってくれてるなら…ごほ、ごほっ!」
「若葉…?若葉、大丈夫か?!しっかりしろ、若葉!」
言葉を紡いでいる最中に激しく咳き込んだ若葉を床に寝かせてありったけの毛布をかき集めて身体にかけてやると、火鉢を何個も用意して周りに置いて部屋を暖める。
驚いた両親が薬湯を用意してくれたり心配そうに見守る中、その日の夜になっても若葉は昏々と眠り続けて、熱も上がる一方だった。
「あの家にもう居られないって…お前どうしたんだよ…」
額に冷たい布をあててやろうとした時――玄関からか細く高い女性の声がした。
「ごめん下さい…息吹と申します。お願いします、若葉に会わせて下さい」
「!い、息吹様…!」
慌てて部屋を飛び出して玄関へ行くと、息吹は玄関の軒先で白い息を吐きながら深々と頭を下げた。
「…若葉は高熱を出してまだ寝てます。…何があったんですか?俺の嫁さんになるって言ったっきり倒れて…それっきり寝込んでます」
「若葉が…!?…若葉が熱を出した時にいつも飲ませてた薬を持って来ます!その時は…会わせて下さい」
「…わかりました」
息吹が飛び出して行く。
丙は再び若葉の元に戻ると枕元に座り、何度も汗を拭ってやった。
こんな太陽も昇っていない時間から出歩くのは妖だけなので最初は放っておいたのだが…何者かの気配は去る様子がなく、恐る恐る障子を少しだけ開いて庭を確認した丙は、自分自身の身体を抱きしめるようにして庭に立っていた若葉を見つけて絶句した。
「若葉!?一体どうし……ずっとここに立ってたのか!?早く中に入って!誰か、火鉢と風呂の用意を!!」
すぐに使用人が起きて来て慌ただしく家に明かりが灯る中、丙は裸足で庭に降りると若葉の冷え切った肩に触れて思わず手を離した。
まるで低温火傷をしたかのように冷え切りながらも、若葉は一言も話さない。
ただ寒さで歯の根がかみ合わずにがちがちと音がして、きっと何か一大事が起きたのだと予想した丙は、無言のまま若葉を部屋の中へと導いた。
「どうした?会いに来てくれたのは嬉しいけど…会いに来たいわけじゃなくてここに来たんだろ?」
「ひのえちゃん……今日から…ここに…置いてもらってもいい…?私…家を出て来たの。ぎんちゃんとはもう暮らせないの。まだ私を…お嫁さんにしたいって思ってくれてるなら…ごほ、ごほっ!」
「若葉…?若葉、大丈夫か?!しっかりしろ、若葉!」
言葉を紡いでいる最中に激しく咳き込んだ若葉を床に寝かせてありったけの毛布をかき集めて身体にかけてやると、火鉢を何個も用意して周りに置いて部屋を暖める。
驚いた両親が薬湯を用意してくれたり心配そうに見守る中、その日の夜になっても若葉は昏々と眠り続けて、熱も上がる一方だった。
「あの家にもう居られないって…お前どうしたんだよ…」
額に冷たい布をあててやろうとした時――玄関からか細く高い女性の声がした。
「ごめん下さい…息吹と申します。お願いします、若葉に会わせて下さい」
「!い、息吹様…!」
慌てて部屋を飛び出して玄関へ行くと、息吹は玄関の軒先で白い息を吐きながら深々と頭を下げた。
「…若葉は高熱を出してまだ寝てます。…何があったんですか?俺の嫁さんになるって言ったっきり倒れて…それっきり寝込んでます」
「若葉が…!?…若葉が熱を出した時にいつも飲ませてた薬を持って来ます!その時は…会わせて下さい」
「…わかりました」
息吹が飛び出して行く。
丙は再び若葉の元に戻ると枕元に座り、何度も汗を拭ってやった。