主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
丙は部屋に閉じこめられたまま、朔に見張られていた。
息吹から若葉の意識が一瞬戻ったことを聞いて喜んだが…何度も後悔が込み上げてきて、言葉にならない。
それに朔から無言で責められている気分になっていて、言い訳をしようにも殺気を絶えず叩き付けられていて、身を竦めていた。
「…どうして不貞を働いたんだ。幸せにしているんじゃなかったのか」
「若葉は…ずっと俺を拒んでいました。とても夫婦とは呼べる関係じゃなかった…。それに若葉はずっと…ずっと銀さんのことを忘れられなくて、想い続けていました」
「だから若葉のせいとでも言いたいのか?銀を忘れさせてやるという自信があったから夫婦になったんじゃないのか?」
「悪かったと思ってます、俺だって心が弱ってて…つい幼馴染だった子に相談していたら…そういうことになってしまって…」
朔はそれまで本気で丙を殺してしまおうと思っていたのだが、呆れてものが言えなくなって黙っていると、何者かがぽすぽすと襖を叩いた。
「朔ちゃん、若葉はもう大丈夫みたい。銀さんがさっき若葉が目覚めて少し話ができたって言ってたよ」
「よかった。お母様、若葉はしばらくうちに…」
「うん、預かるつもり。銀さんがずっと傍についてくれるみたいだから、若葉が起きたら会いに行ってあげてね」
いつもは騒がしく廊下を走り回る小さな妹や弟たちも気を遣ったのか騒ぐこともなく、笑顔の息吹が去ると、丙は自嘲気味な笑みを浮かべて俯いた。
「結局は収まるべきところに収まったってわけだ…」
「…お前にはお父様から処罰が下る。平民と言えど不貞は万死に値する。死が下った場合は潔く受け入れて…死ね」
「……俺のせいで…俺のせいで…!」
悔やむ丙の姿は嘘偽りなく、子までできてしまってはその存在が若葉を一生苦しめるだろう。
いっそのこと幽玄町を出てどこか遠くで銀と一緒に暮らした方が、若葉はよほど幸せになれるかもしれない。
「俺の幼馴染を苦しめて悲しませたことを俺は絶対許さない。お前を今すぐ殺したいが、判断はお父様と若葉に任せる。それまで苦しんで苦しんで…もがき苦しめ」
頭を抱えてうずくまった丙の卑小な姿に鼻を鳴らした朔は、それっきり言葉を交わさずに深々と降り積もる雪を眺めた。
若葉が戻って来たのだ。
今はそれだけで、十分だ。
息吹から若葉の意識が一瞬戻ったことを聞いて喜んだが…何度も後悔が込み上げてきて、言葉にならない。
それに朔から無言で責められている気分になっていて、言い訳をしようにも殺気を絶えず叩き付けられていて、身を竦めていた。
「…どうして不貞を働いたんだ。幸せにしているんじゃなかったのか」
「若葉は…ずっと俺を拒んでいました。とても夫婦とは呼べる関係じゃなかった…。それに若葉はずっと…ずっと銀さんのことを忘れられなくて、想い続けていました」
「だから若葉のせいとでも言いたいのか?銀を忘れさせてやるという自信があったから夫婦になったんじゃないのか?」
「悪かったと思ってます、俺だって心が弱ってて…つい幼馴染だった子に相談していたら…そういうことになってしまって…」
朔はそれまで本気で丙を殺してしまおうと思っていたのだが、呆れてものが言えなくなって黙っていると、何者かがぽすぽすと襖を叩いた。
「朔ちゃん、若葉はもう大丈夫みたい。銀さんがさっき若葉が目覚めて少し話ができたって言ってたよ」
「よかった。お母様、若葉はしばらくうちに…」
「うん、預かるつもり。銀さんがずっと傍についてくれるみたいだから、若葉が起きたら会いに行ってあげてね」
いつもは騒がしく廊下を走り回る小さな妹や弟たちも気を遣ったのか騒ぐこともなく、笑顔の息吹が去ると、丙は自嘲気味な笑みを浮かべて俯いた。
「結局は収まるべきところに収まったってわけだ…」
「…お前にはお父様から処罰が下る。平民と言えど不貞は万死に値する。死が下った場合は潔く受け入れて…死ね」
「……俺のせいで…俺のせいで…!」
悔やむ丙の姿は嘘偽りなく、子までできてしまってはその存在が若葉を一生苦しめるだろう。
いっそのこと幽玄町を出てどこか遠くで銀と一緒に暮らした方が、若葉はよほど幸せになれるかもしれない。
「俺の幼馴染を苦しめて悲しませたことを俺は絶対許さない。お前を今すぐ殺したいが、判断はお父様と若葉に任せる。それまで苦しんで苦しんで…もがき苦しめ」
頭を抱えてうずくまった丙の卑小な姿に鼻を鳴らした朔は、それっきり言葉を交わさずに深々と降り積もる雪を眺めた。
若葉が戻って来たのだ。
今はそれだけで、十分だ。