主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
帝は無理難題を吹っかけてくる。

晴明は陰陽師としては最強だが、この国の頂点に座している帝には逆らえない部分もあり、頭を悩ませていた。


「父様」


「ああ息吹か。どうしたんだい?」


「さっきから難しい顔してるから心配になって…。私のせい?」


「そなたのせいというより、あの盆暗で阿呆な帝のせいだよ。そなたが気に止むことはない」


息吹は、帝に謁見するにあたって御簾越しでも見られることが嫌だと訴えた。

晴明としてももちろんそうしてやりたいが、勅命だと突っぱねられると、今のそれなりに自由な立場をも失いかねない。


互いに白い寝着で就寝しようかという時に息吹が訪ねてきた。

ほぼ毎日謁見を申し立ててくる帝を心底嫌がっていたがーー十六夜という姿の見えない妖が毎回守ってくれるから、まだましだと微笑んだ。


「十六夜はちゃんと仕事をしているようだねえ」


「うん。姿は見えないけど、守ってもらえてるって思うの。道長様も気にかけてくれてるし、心配することなかったよね、ごめんなさい」


ぺこりと頭を下げた息吹の肩を抱いて引き寄せた晴明は、もはや息吹は実の娘といっても差し支えないほどに縁を結んでいた。

ーー未だに、この娘には何かしらの違和感を感じることがある。

それが嫌なものではないので詮索はしていないが、けれど不思議なものを感じる。


「さあもう寝なさい」


「はい、おやすみなさい。父様も早く寝てね」


「ありがとう、おやすみ」


肩に頬をすり寄せて立ち上がり、部屋を後にした息吹を見守った晴明は、ひとつ息を吐いて己が成し遂げんとする願いを小さく口にした。


「母様…もうすぐです。もうすぐ、窮屈な場所からお救い致します」


捕らえられ、残酷なやり方でもって殺された母。

晴明の悲願を知っているのは、道長と主さまのみ。

恨んでも恨みきれないほど呪い、疲れ切っている晴明を息吹は何も知らないなりに癒してくれる。


「十二神将…」


恐ろしく力のある十二人の武神。

彼らは伝説であり、生半可に召喚されたり契約を交わしたりはしない。

だがきっと、その力はいずれ必要となるかもしれない。


「念には念を、か」


それは最も得意とすること。

晴明は意地の悪い笑みを浮かべながら、床に就いた。



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