主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「十二神将…とは何だ?」


「いわゆる仏や神と呼ばれる者たちだ。武神で義理人情があり、悪を許さぬ。…彼らと契約する」


道長は首を捻るばかり。

説明してもあまり理解してはもらえないことはわかっていたが、晴明は敢えて道長にそれを明かして、茶を口に運んだ。


「いずれ、のつもりだが。その間、私は完全に無防備になる。だから、そなたには息吹を預かってもらいたい」


「それはお安い御用だが…俺は息吹のことよりお前のことの方が気になる!無防備だと?勝ち目はあるのか?!」


「勝算はあまりないな。だがやらねばならぬ。このままずっと幽玄町の主と息吹を関わらせるつもりもなければ、彼らと契約できればこれ以上の守り手は居ないのだよ」


眉を八の字にして訝しむ道長に笑いかける晴明。

だが語ったことは真実であり、全て。

十二神将と契約できれば無敵と言っても過剰ではない。
何せ、相手は神仏なのだから、妖怪風情が太刀打ちできるはずもないのだ。


「お前が勝算はないなどと弱気になるとは…。息吹のことは任せろ。そして必ず勝て。わかったな?」


「ああ、必ず。しかし眠らず、目を逸らさず、意識を限界まで集中させてもなお相見えることもできぬ。これは楽しみだな」


何かを成し遂げる時は、高揚感に包まれて童子に返ったかのような気分になる。

完璧故に、何かに挑戦するには入念な準備と時間をかけて、意識を高みにまで昇らせる方法を晴明は知っていた。


「あいつ、また…」


「十六夜か。息吹はちゃんと守れたのだろうな?」


「誰にものを言っている?」


不敵に笑む主さま。

最近は帝をからかって脅したり少し傷つけたりして楽しんでいるのは知っている。

そして、息吹と距離を縮めつつあることも。

それはーー本意ではない。


「…おい、殺気を飛ばすな」


「おっと、これは失礼、少々考え事をしていた。帝はまだ諦めぬのか。そなたの精進が足りぬのでは?」


主さまの切れ長の瞳がぎらりと冴えた。

これは少し逆鱗に触れたのだなと悟った晴明は、ごろりと横になって背を向けた。


「父として心配なことが多すぎる」


「…お前は過保護すぎる。何故俺に任せておかないんだ。信用がないのか?」


「そのようなことはないが、不安点は幾つかあるな。敢えてそれは言わぬ」


主さまをかどわかすことに関しては天下一品の晴明。

今日も負かしてやったとほくそ笑みながら、準備に取り掛かった。
< 253 / 593 >

この作品をシェア

pagetop