主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
その問いは、頭上から突然降ってきた。
「お前にとっての息吹とは、一体どんな存在だ」
毎晩調べ物をして徹夜続きの晴明は、うっすら目を開けて、寝転がっている顔を覗き込んでいるその主に寝惚け声で返した。
「藪から棒に突然何だ?」
「娘だから、以外の返答をしろ。お前の息吹に対する執着心は度が過ぎている」
ーーそれはこちらの台詞だ、と内心呟いた晴明は、のろのろと身体を起こして、庭の花々に目を遣った。
「…天女のような…」
「…何?」
「仏のような…天女のような…わからぬが、時折息吹が神々しく見える時がある。十六夜、そなたこそ何も感じぬのか?感じているのは恋慕のみか?」
「………」
深い沈黙。
薄く形の良い唇がへの字に曲がり、明らかに気分を害したようだが、晴明は気にしない。
そもそもこの男の百鬼ではないし、主従関係はない。
敢えて言うならば養父ではあるが、親らしいことをされたこともないような気がする。
…が、あまり質問をしたりしない主さまの問いには確と答えなければ、と居住まいを正した。
「私はあの子が小さな頃から何かしらのものを感じていたよ。未だに何かはわからぬが、敬わなければと思うのだ。故に数奇な運命には巡らせたくはない。意味がわかるか」
「…俺に関わるな、と?」
「これは話が早くて助かるねえ。つまりはそういうことだ。例え万が一天地が逆転して、そなたが息吹を籠絡できたとして、次にそなたの前に立ちはだかるのは私というわけだ。楽しいだろう?」
「…お前は俺を見事に嫌っているな。構わんが、仮にも父代わりだったんだぞ。少しは敬え」
……
敬っているからこそ最後に助けを頼んだし、嫌ってなどいないし、むしろ…
むしろ対等の関係でいたいからこそ百鬼には加わらないと固く決めているのに、このとんちんかんが。
晴明の心の中でぼやきが炸裂する。
だが問いには答えた。
それも、真実を。
黙っていればよく似ている、と言われがちなふたりは、しばらく見つめ合っていたがらどちらからでもなく自然を外して庭を眺める。
「天女、か。お前の発想は相変わらず変わっているな」
「堅物で偏屈で頑固な者には想像がつかぬ発想力だろう?」
してやったり。
「お前にとっての息吹とは、一体どんな存在だ」
毎晩調べ物をして徹夜続きの晴明は、うっすら目を開けて、寝転がっている顔を覗き込んでいるその主に寝惚け声で返した。
「藪から棒に突然何だ?」
「娘だから、以外の返答をしろ。お前の息吹に対する執着心は度が過ぎている」
ーーそれはこちらの台詞だ、と内心呟いた晴明は、のろのろと身体を起こして、庭の花々に目を遣った。
「…天女のような…」
「…何?」
「仏のような…天女のような…わからぬが、時折息吹が神々しく見える時がある。十六夜、そなたこそ何も感じぬのか?感じているのは恋慕のみか?」
「………」
深い沈黙。
薄く形の良い唇がへの字に曲がり、明らかに気分を害したようだが、晴明は気にしない。
そもそもこの男の百鬼ではないし、主従関係はない。
敢えて言うならば養父ではあるが、親らしいことをされたこともないような気がする。
…が、あまり質問をしたりしない主さまの問いには確と答えなければ、と居住まいを正した。
「私はあの子が小さな頃から何かしらのものを感じていたよ。未だに何かはわからぬが、敬わなければと思うのだ。故に数奇な運命には巡らせたくはない。意味がわかるか」
「…俺に関わるな、と?」
「これは話が早くて助かるねえ。つまりはそういうことだ。例え万が一天地が逆転して、そなたが息吹を籠絡できたとして、次にそなたの前に立ちはだかるのは私というわけだ。楽しいだろう?」
「…お前は俺を見事に嫌っているな。構わんが、仮にも父代わりだったんだぞ。少しは敬え」
……
敬っているからこそ最後に助けを頼んだし、嫌ってなどいないし、むしろ…
むしろ対等の関係でいたいからこそ百鬼には加わらないと固く決めているのに、このとんちんかんが。
晴明の心の中でぼやきが炸裂する。
だが問いには答えた。
それも、真実を。
黙っていればよく似ている、と言われがちなふたりは、しばらく見つめ合っていたがらどちらからでもなく自然を外して庭を眺める。
「天女、か。お前の発想は相変わらず変わっているな」
「堅物で偏屈で頑固な者には想像がつかぬ発想力だろう?」
してやったり。