主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「…いよいよあの子の星回りが悪くなってきたな」


晴明は毎夜、息吹の星回りを調べていた。

悪くなるばかりの息吹の行く末に眉を潜め、思案する。

逆に帝の機嫌は日々良くなっており、不吉な装いを呈していた。


…あれは確実に何かを企んでいる。

聡い晴明はその動向を危惧して日々帝の動向を探っていた。


「久々に百鬼夜行でも見てみたいねえ」


「…は?」


「そなたの百鬼夜行だよ。近いうち出番がやって来る」


「…俺の正体を明かしてもいいのか?」


「いや、その必要はない。少々脅してくれればいい。後は私が処理する」


処理。という響きに冷徹な温度を感じた主さまがぞっとする。


「何をする気だ」


「私か?そうだねえ…二度と悪さをせぬよう、帝の血脈に二度と子が出来ぬよう呪でもかけようかと思っている」


ーー晴明はそう簡単に言って微笑したが、呪術をかけるとはそう生半可なことではない。

いくら腕に覚えがあろうとも、失敗すれば自分自身に呪が返ってくる。


「晴明」


「心配無用。そなたなら脅し程度簡単なものだろう。私の方は準備にもう少々時間がかかる。その間に済ませておいてほしい」


主さまも帝の不気味な様子には気付いていた。

あれは息吹を諦めてなどいない。

むしろ執念のようなものを感じて胸焼けを覚えるほどだ。


「脅し、か。百鬼夜行を使うほどか?」


「くれぐれもあの子には見せぬように。幽玄町はもう過去の町。二度と関わらせたくはない」


主さまの盃に晴明が酒を注ぐ。

過去の町と言われてむっとはしたが、反論はしなかった。


「…代償は高くつくぞ」


「借りは必ず返す。私の帝への復讐はそろそろ叶う。そなたも私の母を偲んでくれるならば、止めないでほしい」


葛の葉という名の美しかった妖狐。

人を愛したために、狩られた母。


人と添い遂げると嬉しそうに言った葛の葉の笑顔がよぎった主さまは、晴明の盃に酒を注いで夕暮れの陽を見上げた。



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