主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
晴明が部屋の障子を開けるまで気持ちよく眠っていた主さまは、突然の朝日に機嫌が急降下する。
「…山姫だと…?」
「茨木童子は酒呑童子の子分のはずだぞ。いわばそなたの敵だ。何故百鬼に?…まさかそれを言い訳に山姫に言い寄っているのでは…」
切迫した晴明の表情は、主さまの唇の口角を上げさせた。
珍しく焦り、いつもより低い声で不安を口にした晴明をからかう好機が来たのだと感じた主さまは、むくりと起き上がり、晴明の肩を押して部屋から出て煙管を噛んだ。
「茨木童子が通い詰めているのは確かだ。そういえば山姫とよく話している姿を見かける。さっきも来ていたはずだが…山姫は居ないのか?」
「ああ。青鬼たちの話ではどこかで逢引きをしていると…」
主さまが縁側に腰掛けるとすぐさま晴明も隣に座り、成人したとはいえまだまだひよっこの晴明を瞳を細めて笑んだ主さまは、空に向けて煙を吐いた。
「逢引き、か。屋敷に居ないのならそうだろう。…帰ってきたみたいだぞ」
晴明が主さまを問い詰めている間に玄関から物音がすると、部屋の奥の廊下を主さまと2人で注視した。
すると現れたのは…山姫だけではなく、茨木童子も一緒だった。
それに対して怒りの声を上げたのは、晴明ではなく主さまだった。
「…百鬼でもないのに俺の屋敷に勝手に上がるな。…殺すぞ」
刀を手にゆらりと立ち上がった主さまに怖気づいた茨木童子は、白髪のような真っ白な髪を短く切り揃え、山姫のように目の吊ったなかなかの美形だ。
だが主さまや晴明には劣っており、それを感じた茨木童子は、山姫の肩を抱いていた手を離すと、後ずさりをして言い訳をした。
「いや、わざとでは…」
「早く出て行け。俺の縄張りに許可なく入り込むな。俺でなくとも百鬼に殺される可能性もある。…気をつけろ」
茨木童子がこけつまろびながら屋敷から這う這うの体で出て行く。
それを見送った山姫がため息をつきながら居間を通って縁側にやって来た。
「あんなに脅さなくても」
「お前の男だからといって贔屓したりはしない。…百鬼でもない男と夫婦になるのならば、ここから出て行ってもらう。もちろん百鬼からも抜けてもらう」
感情のこもらない別れともとれる主さまの宣言に慌てた山姫は、首が取れそうな勢いでぶんぶんと振った。
「ち、違いますよ!…晴明?どうしたんだい?」
「…なんでもない」
限りなく険しい表情を浮かべていた晴明に気づいた山姫が声をかけたが…晴明は腰を上げると、屋敷の玄関に止めている牛車に足早に向かった。
「…山姫だと…?」
「茨木童子は酒呑童子の子分のはずだぞ。いわばそなたの敵だ。何故百鬼に?…まさかそれを言い訳に山姫に言い寄っているのでは…」
切迫した晴明の表情は、主さまの唇の口角を上げさせた。
珍しく焦り、いつもより低い声で不安を口にした晴明をからかう好機が来たのだと感じた主さまは、むくりと起き上がり、晴明の肩を押して部屋から出て煙管を噛んだ。
「茨木童子が通い詰めているのは確かだ。そういえば山姫とよく話している姿を見かける。さっきも来ていたはずだが…山姫は居ないのか?」
「ああ。青鬼たちの話ではどこかで逢引きをしていると…」
主さまが縁側に腰掛けるとすぐさま晴明も隣に座り、成人したとはいえまだまだひよっこの晴明を瞳を細めて笑んだ主さまは、空に向けて煙を吐いた。
「逢引き、か。屋敷に居ないのならそうだろう。…帰ってきたみたいだぞ」
晴明が主さまを問い詰めている間に玄関から物音がすると、部屋の奥の廊下を主さまと2人で注視した。
すると現れたのは…山姫だけではなく、茨木童子も一緒だった。
それに対して怒りの声を上げたのは、晴明ではなく主さまだった。
「…百鬼でもないのに俺の屋敷に勝手に上がるな。…殺すぞ」
刀を手にゆらりと立ち上がった主さまに怖気づいた茨木童子は、白髪のような真っ白な髪を短く切り揃え、山姫のように目の吊ったなかなかの美形だ。
だが主さまや晴明には劣っており、それを感じた茨木童子は、山姫の肩を抱いていた手を離すと、後ずさりをして言い訳をした。
「いや、わざとでは…」
「早く出て行け。俺の縄張りに許可なく入り込むな。俺でなくとも百鬼に殺される可能性もある。…気をつけろ」
茨木童子がこけつまろびながら屋敷から這う這うの体で出て行く。
それを見送った山姫がため息をつきながら居間を通って縁側にやって来た。
「あんなに脅さなくても」
「お前の男だからといって贔屓したりはしない。…百鬼でもない男と夫婦になるのならば、ここから出て行ってもらう。もちろん百鬼からも抜けてもらう」
感情のこもらない別れともとれる主さまの宣言に慌てた山姫は、首が取れそうな勢いでぶんぶんと振った。
「ち、違いますよ!…晴明?どうしたんだい?」
「…なんでもない」
限りなく険しい表情を浮かべていた晴明に気づいた山姫が声をかけたが…晴明は腰を上げると、屋敷の玄関に止めている牛車に足早に向かった。