主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
「主さま…あたし、なんか晴明を怒らせるようなことでもしたんですかねえ…」
晴明が平安町に帰った後、早速また寝ようと思っていた主さまの背中にそう話しかけた山姫の声は意気消沈していた。
…確かにあの晴明の態度は冷たかったが、いつも強気で気丈な山姫が落ち込むほどのものではないし、いつもなら食ってかかっているはずだ。
「…お前にも心当たりがあるんじゃないのか」
「えっ?…茨木童子のことですか…?別に…あたしたち…そんな仲じゃ…」
「それが心当たりか。晴明とて機嫌の悪い時もある。幼い頃から育ててくれた女が何者かわからない男と一緒に居れば癪というものだ」
男女の機微に断然疎い主さまからそう言われても山姫はぴんとこなかったが、先ほどまで茨木童子と一緒に居て楽しかった気分は一気に消え失せた。
「…主さまが晴明を慰めてやって下さいまし。あたしにはきっとできないから…」
「…まあ俺に任せておけ。夕方まで絶対に起こすな。絶対だからな」
何度も念押しされた山姫が小さくうなずくと、主さまはさっさと部屋に引きこもってしまった。
それからというものの山姫は何も手がつかなくなり、あんなに晴明が怒っていた理由をずっと考えていたのだが…茨木童子の存在がそんなに嫌だったのだろうか?
それは、何故?
「…晴明…」
以前晴明が“連絡用に”と言って置いて行った人型に切り取られた紙を懐から出した山姫は、赤茶の瞳を潤ませてじっと見つめた。
もしかしたら晴明に好意を持たれているのでは、というのは感じていたが…やはり誰かに愛されたいし、男だって…食いたい。
茨木童子は見目もよく好意を寄せてくれていたのでうってつけだと思っていたが…どうやら晴明の神経を逆なでしたようだ。
「…ふん、あんな青二才に好かれたって、ちっとも嬉しくないんだよ」
気丈にそう言ったが、今後もずっと晴明にあんな態度を取られるのだけは、絶対に嫌だと思った。
「主さま…主さま、夕方ですよ。百鬼夜行の前に晴明のところに行くんでしょう?……主さま!!」
「!!…お、起きている」
いつまで経ってもぐずって部屋から出てこない主さまに業を煮やした山姫が部屋の前で怒鳴ると、さすがに恐れをなしたのか、主さまがそろりと出て来る。
山姫は腰に手をあててため息をつき、主さまの草履を用意した。
「さ、晴明のところに行ってらっしゃいまし。どうして怒っていたのか聞き出すまで帰って来ないで下さいな」
「…あ、ああ、わかった」
主さま、びくびく。
晴明が平安町に帰った後、早速また寝ようと思っていた主さまの背中にそう話しかけた山姫の声は意気消沈していた。
…確かにあの晴明の態度は冷たかったが、いつも強気で気丈な山姫が落ち込むほどのものではないし、いつもなら食ってかかっているはずだ。
「…お前にも心当たりがあるんじゃないのか」
「えっ?…茨木童子のことですか…?別に…あたしたち…そんな仲じゃ…」
「それが心当たりか。晴明とて機嫌の悪い時もある。幼い頃から育ててくれた女が何者かわからない男と一緒に居れば癪というものだ」
男女の機微に断然疎い主さまからそう言われても山姫はぴんとこなかったが、先ほどまで茨木童子と一緒に居て楽しかった気分は一気に消え失せた。
「…主さまが晴明を慰めてやって下さいまし。あたしにはきっとできないから…」
「…まあ俺に任せておけ。夕方まで絶対に起こすな。絶対だからな」
何度も念押しされた山姫が小さくうなずくと、主さまはさっさと部屋に引きこもってしまった。
それからというものの山姫は何も手がつかなくなり、あんなに晴明が怒っていた理由をずっと考えていたのだが…茨木童子の存在がそんなに嫌だったのだろうか?
それは、何故?
「…晴明…」
以前晴明が“連絡用に”と言って置いて行った人型に切り取られた紙を懐から出した山姫は、赤茶の瞳を潤ませてじっと見つめた。
もしかしたら晴明に好意を持たれているのでは、というのは感じていたが…やはり誰かに愛されたいし、男だって…食いたい。
茨木童子は見目もよく好意を寄せてくれていたのでうってつけだと思っていたが…どうやら晴明の神経を逆なでしたようだ。
「…ふん、あんな青二才に好かれたって、ちっとも嬉しくないんだよ」
気丈にそう言ったが、今後もずっと晴明にあんな態度を取られるのだけは、絶対に嫌だと思った。
「主さま…主さま、夕方ですよ。百鬼夜行の前に晴明のところに行くんでしょう?……主さま!!」
「!!…お、起きている」
いつまで経ってもぐずって部屋から出てこない主さまに業を煮やした山姫が部屋の前で怒鳴ると、さすがに恐れをなしたのか、主さまがそろりと出て来る。
山姫は腰に手をあててため息をつき、主さまの草履を用意した。
「さ、晴明のところに行ってらっしゃいまし。どうして怒っていたのか聞き出すまで帰って来ないで下さいな」
「…あ、ああ、わかった」
主さま、びくびく。