主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※
それからというものの、晴明は相変わらず主さまの屋敷に寄り付くことはなかった。
晴明とあんな形で別れてしまった山姫にとっては気がかりの何ものでもなく、毎日茨木童子が通ってくる日常は変わらず、苛立ちばかりが募る。
「山姫、そろそろ俺と夫婦になる決心を固めてくれ」
「…いやだね。あたしは百鬼だからここを守らなけりゃいけないし、あんたは百鬼じゃないからここに長居できないだろ。そろそろ主さまが痺れを切らしてあんたを殺すかもしれないよ」
「まさか…主さまに懸想しているのか?堅物で短気なあの男を?俺の方がお前を幸せにしてやれる」
…確かに茨木童子は見目も良いし、優しいし、夫にするにはうってつけかもしれないが…
この男が晴明がここに寄り付かなくなった原因であることは確かなので、茨木童子と一緒に居ても楽しい気分になれない山姫は縁側から腰を上げて手で追い払う。
「あたしが主さまに懸想してるわけないだろ、やめとくれ。…とにかくここに来るのはやめてほしいんだ。あんたがここに来ることで晴明が来なくなってしまったんだ」
茨木童子の表情が曇り、颯爽と立ち上がると山姫の肩を強く抱いて顔を覗き込んだ。
…まだ実は口づけのひとつも交わしていないのだが、今は絶対にする気になれないので山姫が強く肩を押し返すと、茨木童子の顔が険悪なものに変わる。
「晴明?半妖の陰陽師のことか?中途半端なくせに人間側についた男だぞ?まさか晴明のことを…」
とにかく疑い深い茨木童子の正確に飽き飽きした山姫がため息をついた時、いきなり主さまの部屋に通じる襖がものすごい勢いで開いた。
思わず身構えてしまった山姫は表情を強張らせたが、部屋から出て来た主さまは無表情で、背筋に悪寒が走った。
「ぬ、主さま…、あの…あたし…」
「…そこの男。誰の許しを得てこの屋敷に上がり込んでいる?何度通ったとてお前を百鬼に迎え入れる気はない。…ああ、すでに目的が違うのか?山姫、こいつと夫婦になりたいのならば百鬼から抜けてもいい。今すぐここを出て…」
「いやです!!」
山姫の赤茶の髪が逆立ち、直後茨木童子の頬が大きく裂けた。
それが山姫の鋭く尖った爪であると気付いた茨木童子が飛び退ったが、百鬼をやめさせられるかもしれない恐怖に襲われた山姫はなおも攻撃を繰り返し、牙を剥いた。
「出て行きな!あたしは主さまの百鬼。それにあたしはあんたと夫婦になるつもりはない!あたしは…」
頭に浮かんだ男の姿を打ち消すように、何度も首を振った。
晴明とあんな形で別れてしまった山姫にとっては気がかりの何ものでもなく、毎日茨木童子が通ってくる日常は変わらず、苛立ちばかりが募る。
「山姫、そろそろ俺と夫婦になる決心を固めてくれ」
「…いやだね。あたしは百鬼だからここを守らなけりゃいけないし、あんたは百鬼じゃないからここに長居できないだろ。そろそろ主さまが痺れを切らしてあんたを殺すかもしれないよ」
「まさか…主さまに懸想しているのか?堅物で短気なあの男を?俺の方がお前を幸せにしてやれる」
…確かに茨木童子は見目も良いし、優しいし、夫にするにはうってつけかもしれないが…
この男が晴明がここに寄り付かなくなった原因であることは確かなので、茨木童子と一緒に居ても楽しい気分になれない山姫は縁側から腰を上げて手で追い払う。
「あたしが主さまに懸想してるわけないだろ、やめとくれ。…とにかくここに来るのはやめてほしいんだ。あんたがここに来ることで晴明が来なくなってしまったんだ」
茨木童子の表情が曇り、颯爽と立ち上がると山姫の肩を強く抱いて顔を覗き込んだ。
…まだ実は口づけのひとつも交わしていないのだが、今は絶対にする気になれないので山姫が強く肩を押し返すと、茨木童子の顔が険悪なものに変わる。
「晴明?半妖の陰陽師のことか?中途半端なくせに人間側についた男だぞ?まさか晴明のことを…」
とにかく疑い深い茨木童子の正確に飽き飽きした山姫がため息をついた時、いきなり主さまの部屋に通じる襖がものすごい勢いで開いた。
思わず身構えてしまった山姫は表情を強張らせたが、部屋から出て来た主さまは無表情で、背筋に悪寒が走った。
「ぬ、主さま…、あの…あたし…」
「…そこの男。誰の許しを得てこの屋敷に上がり込んでいる?何度通ったとてお前を百鬼に迎え入れる気はない。…ああ、すでに目的が違うのか?山姫、こいつと夫婦になりたいのならば百鬼から抜けてもいい。今すぐここを出て…」
「いやです!!」
山姫の赤茶の髪が逆立ち、直後茨木童子の頬が大きく裂けた。
それが山姫の鋭く尖った爪であると気付いた茨木童子が飛び退ったが、百鬼をやめさせられるかもしれない恐怖に襲われた山姫はなおも攻撃を繰り返し、牙を剥いた。
「出て行きな!あたしは主さまの百鬼。それにあたしはあんたと夫婦になるつもりはない!あたしは…」
頭に浮かんだ男の姿を打ち消すように、何度も首を振った。