偏食家のテーブル
そして、ユタカは九日ぶりにスーツを着た。彼の所属する会社に行くためだ。実はまだ通勤できる状態ではない。が、彼女が言うので仕方ない。髪を気にしながら玄関に向かった。
「ハイ、これ」
チェスカがユタカに紙袋を渡した。
「ナニ?これ」
「作ってみたの、お弁当。」
「エッ!いいよ!いらないよ。」
「ナニよ!せっかく作ったんだから持っていきなさいよ!」
「えぇ…だって…」
結婚当初はハルカも作っていたが、ここ一年はご無沙汰だった。
「いいから持ってって!」
「わかったよ。」
渋々、了解した。そして、家を出た。

会社に着くと、
「おお!田口。」
と、声をかけられた。同僚の浅井君だ。
「何日もごめんなさい。大丈夫でした?」
「うん。まぁなんとか。」
デスクに着くと、課長の藤村が近づいてきた。
「大丈夫か?変な店行って、変な病気でももらったのかと思ったぞ。」
藤村課長はこういう男だった。
「そんなハズないでしょ!もうっ!」
彼女は杉崎さんだ。杉崎さんはこの課に来てまだ半年。しかし、もう欠かせないムードメーカーだ。
「すいません。ご迷惑おかけしました。もう、体調も悪くないですから。」
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