偏食家のテーブル

六月四日

ソレは夢ではなかった。田口豊は奇妙な生きもの（本人はテーブルと言うが）と、暮らす事になった。（本人はずっと前から一緒だったと言うが）昨日はユタカが買ってきた食材を使い、彼女がチンジャオロースーと大根の煮物を作った。スーパーのカゴの中に、ユタカがポイポイ入れるから、こんな献立になった、と彼女が言っていた。しかし、おいしかった。料理というモノは素晴らしいと感じた。
そして、ユタカは風呂に入り、眠りにつこうと思った。あの日以来、彼のベッドはソファーだ。だから彼女を本物のベッドへ案内した。「アラ、いいの？ワタシがベッドで。」などと言っていた。「ん、まぁ」としか答えなかった。
本当は困っていた。もしも間違って、ハルカと彼女が出会ってしまったら…ソレは隣のおばさんの比ではない。しかし、追い出すワケにもいかない。その困惑の中、久しぶりの手料理の満腹感の中、深い眠りについた。

そして、朝。
「起きて！仕事行くんでしょ！」
「ハルカ？」
「もう！いい加減にして！ワタシよ！チェスカ！」
ユタカは二度目の間違いを犯した。コレはファウル。テーブルとはいえ、女性の名前を二度も間違えたらファウルだ。