偏食家のテーブル

九年前、春 1

ハルカが正式なこの家の住人になった。今までは毎日来て、毎日泊まっていく友達だったのだが、大家に紹介し、晴れて今日、公式な住人として生活を始めた。カナにとってはそんなモノどうでもよかったのだが、ハルカはその「居候状態」に居心地の悪さを感じていた。「早く大家さんに会わせて」とハルカは事あるごとに言っていた。が、カナは「うん、来週くらい。…そうね来週。」と言って引き伸ばしていた。
そして、今日だ。やっと今日だ。長かった。
ルールは今までと同じだった。金はすべて半分。電気も、水も。そして、部屋も。このアパートは新婚をターゲットにしているらしく、二つの部屋とダイニングキッチンがあった。玄関を入ってすぐの部屋がハルカ。そして、その奥の部屋がカナのモノだった。
生活は変わらなかった。ハルカもカナも。
どちらかに彼氏が出来たら変わるかなとも思ったが、これが出来ない。散々、二人で「どうしよっかぁ?」「どうする?」なんて話し合ったがムダだった。自意識過剰の取り越し苦労。残念なくらい恥ずかしい。
しかし、二人とも大学三年生。社会に出る前の助走の時間。精力的に動かねばウソだ。
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