偏食家のテーブル

九年前、春 3

カナは見事にミスキャンパスとなった。一番人気が堂々と栄冠を手にした。と、同時に恋のチャンスを遠ざけた。
ハルカとユタカも初ライブを成功させた。カナももちろんそのライブを見た。そこにはいつものハルカはいなかった。そこにいたのは一人の魅力的な歌声を持つクラブミュージシャンだった。そして、その隣には冴えなかったハズのユタカが、鋭くまた優しい言葉でステージを彩っている。
素晴らしいステージ。
カナはそう思った。そして、ハルカに嫉妬した。自分は大学一の美人と認められていながら、なぜ満たされないのか?男?音楽?
カナにないものは、ハルカが持っていた。逆にハルカにないものは、カナが持っていた。
ハルカもカナに嫉妬していた?いや、ハルカはカナに嫉妬していなかった。その嫉妬心みたいなものも、カナにしかないものだった。その奔放な性格に、またカナは嫉妬した。

日曜日は土曜の次の日だ。誰が決めたか、世界はそうやって動く。土曜日はクラブに行く日だ。その次の日は大学も休みの日曜だ。カナはその夕方が好きだった。昼まで寝たその後。
自由だ。
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