バイナリー・ハート 番外編


 ユイの他に恋愛経験のないランシュには、これも難解な命題だった。

 ランシュは気を取り直して、先生の期待を裏切る。


「違います。ユイの言った事が分からないからです」
「なんだ、まだ考えていたのか。どうせ次の休みには分かる事じゃないか」


 途端にどうでもよくなったのか、先生は投げやりに言う。


「そうですけど、気になるんですよ」

「おまえ、今まで彼女の事を気にかけた事はなかっただろう」

「会った事もないし、記憶にもありませんしね。奥まで探っても本当に見つからないんですよ。彼女のデータ」

「だろうな。生まれて三日じゃ」

「え?」


 先生がサラリと口にした言葉が、ランシュの心に引っかかった。

< 46 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop