バイナリー・ハート 番外編
ユイの他に恋愛経験のないランシュには、これも難解な命題だった。
ランシュは気を取り直して、先生の期待を裏切る。
「違います。ユイの言った事が分からないからです」
「なんだ、まだ考えていたのか。どうせ次の休みには分かる事じゃないか」
途端にどうでもよくなったのか、先生は投げやりに言う。
「そうですけど、気になるんですよ」
「おまえ、今まで彼女の事を気にかけた事はなかっただろう」
「会った事もないし、記憶にもありませんしね。奥まで探っても本当に見つからないんですよ。彼女のデータ」
「だろうな。生まれて三日じゃ」
「え?」
先生がサラリと口にした言葉が、ランシュの心に引っかかった。