バージニティVirginity
自宅の玄関を開け、内から鍵を掛けた途端、サトルは豹変した。

玄関口に自分の鞄を乱暴に放り投げると、玲の手を強く引っ張り、だだだっと走るようにして、暗い部屋の中に連れ込んだ。

玲は足がもつれそうになる。


「ちょっと…待って。靴が」

玲はパンプスを履いたままだった。

玲の言葉などサトルは聞いていなかった。
何が起こったのか、玲にはわけがわからなかった。

サトルはベッドのある部屋に玲を押し込むと、タックルするようにして、ベッドの上に突き飛ばした。

玲は「きゃっ…」といって倒れこんだ。

ひざ丈の黒いプリーツスカートが捲り上がり、黒い網タイツの太腿が露わになる。

サトルは無言のまま、素早い動作で灯りを点けた。

そして、玲の片足を持ち上げ、履いていたバックルの付きのパンプスをむしり取るようにして左右次々に脱がせると、自分のダンガリーシャツとTシャツをさっと脱ぎ捨てた。

少し肋骨の浮き出た上半身を晒すと、ぴょんとベッドに飛び乗り、玲の上に馬乗りになった。


「すげーエロい体…
こんなの初めてだよ」

昂奮しきったサトルの鼻息は荒く、玲のブラウスとキャミソールを手荒に捲り上げると、ブラジャーの胸元に舌を這わせた。

「待って。待ってよ!」

玲が抗うとサトルは玲の口を塞ぐようにキスをし、右手で玲の太腿の内側をまさぐり始めた。

玲は渾身の力を込めて、サトルの体を押しやった。

サトルを落ち着かせようと思った。

「わかった。わかったから!
ちゃんと綺麗にしてからしようよ。
汗かいちゃったもん。シャワーを浴びようよ」

「いらねーよ、そんなもん。ワイルドでいこうぜ?」

サトルは玲の首筋にキスをしてきた。

玲は作り笑いをした。
「ダメ、いるって。恥ずかしいもん。じゃ、私だけでも浴びてきていい?」


それは一時しのぎの行動だった。

サトルとは寝たくない、と玲は思った。しかし、サトルの様子からいって、帰る、とはとても言えない。
玲はここにきたことを後悔した。

サトルとは二度と逢わない。

ここはおとなしくして、早く済ませて帰ろう…シャワーを浴びながら、玲は思った。

シャワーから出た玲がバスタオルで体を拭いていると、急に脱衣所の扉が開いた。
上半身裸の黒いボクサーパンツ姿のサトルが立っていた。

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