バージニティVirginity
「なに…?」

玲が言いかけると、サトルはいきなり玲にカメラを向け、カシャとシャッターを切った。

「何するの!」

玲は思わず怒鳴った。

「記念撮影…」
サトルは困惑したように薄笑いを浮かべて言う。


「ひどい!写真撮るなんて。
そんなの撮ってどうする気なの。
消してよ!今すぐ消して」

玲は激しい怒りを感じた。
手早く下着を付け、ブラウスを羽織った。

「私、帰るから!もう来ない。」

「えっ帰るの?これからなのに?」

サトルは傷ついたような顔をした。

玲がブラウスのボタンを急いで留めていると、ふいにサトルの右手が玲の左手首を掴んだ。


「脱げよ」

サトルの目は殺気立っていた。

「カメラはこうすりゃいいんだろ!」

サトルは怒鳴ると、カメラを脱衣所の床に叩きつけた。
ゴンッと重い音がして、玲はビクッとなった。

手首を握ったまま離そうとしないサトルの手の力強さに、玲は足が震えてきた。殴られるかもしれないと思った。

サトルの血走った目はすわり、怒っているのか、悲しんでいるのかもわからなかった。

「……わかった。脱ぐから。手を放して。このままじゃ脱げないわ」

玲が上目遣いに媚びると、サトルは手を離したが、目は座ったままだった。

「お願いだから、乱暴にしないで。
優しくしてよ。ね?」

サトルの機嫌をとろうと、玲は甘えた声で言い、服を脱ぎ始めた。







遮光カーテンを閉めたままの暗い寝室に入ると、玲はベッドに倒れこんだ。


足にへばりつく網タイツが気持ち悪かった。
それを最後の力を振り絞り、脱ぎ捨てた。

「やっと帰れた…」

玲は、目を閉じ呟く。
クタクタだった。

サトルは外見に似合わずタフな男だった。
持てるテクニックを駆使して、玲に挑んできた。
一晩中、玲はベッドの上でサトルに様々な要求をされて、朝方までほとんど寝かせてもらえなかった。


サトルが玲を解放したのは、昼十二時少し過ぎた頃だった。


『夕方、ラウンジの勤務があるからそろそろ帰らなきゃ』

朝、サトルから与えられた菓子パンを食べながら、玲が言うと、サトルは玲の言葉を完全に黙殺した。

ランニングにボクサーパンツ姿のサトルは、
『ここは俺の家なんだから、俺のルールに従って』
などと言って玲に服を着ることを許さず、朝食のパンもキャミソールとショーツ姿で食べた。

玲はそれ以上強く言えず、朝食が済むとサトルに言われるまま一緒にベッドに入り、サトルが選んだDVD映画を観て過ごした。

映画は退屈で眠かったが、寝てしまうと何をされるかわからない。

必死に堪えた。

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