バージニティVirginity

「ありがとう。嬉しい……」


笑顔で言いながら、いつも贈り物をするタイミングが、情事が終わってからなので、ご褒美を貰う犬みたい…と玲は思った。


貰ったバッグや時計を、玲は同期の咲に見せた。
咲は、唯一の友達だった。

桜田と付き合い始めてから、なんとなく学生時代の友達とは疎遠になった。


咲は、玲が桜田と不倫していることを軽蔑しなかった。

玲と咲はよく会社帰りに、食事や買い物に行った。

「いいなあ、そんなの貰えて。
私なんて、彼からの誕生日プレゼント、ユニクロのTシャツだったよ…」

経理課の咲は、二つ上の先輩社員と交際していた。


「別に良くないよ〜なんか本当、
体だけの関係って感じだもん」

玲は煙草の煙が咲の方へ行かないかように顔を背けて、煙を吐く。
煙草も桜田と付き合い始めてから覚えた。

「そうなんだ。それいうなら、うちの彼も酷いよ。避妊してくれないんだよ。
面倒臭いからって。出来たら結婚すればいいしって」

「ふーん、咲、結婚するんだ」

「そりゃ、するよ。
そのために付き合ってるんだし」


同い年の咲が結婚を考えているとは玲は思いもしなかった。
まったく違う世界を生きているようだと思う。


桜田は避妊に対して厳重だった。

玲に生理日を確認し、予防を怠らない。

咲の彼と桜田の、どちらの方が恋人に対して誠実なのか、玲にはよくわからなかった。



桜田はたびたび、遊び仲間との飲み会や趣味の釣りに玲を連れて行った。


桜田の仲間たちは、中学、高校時代の地元の友達で、類は友を呼ぶと言う言葉通り、皆、仕事と家庭を持ち、遊びと女を欲しがった。

中には桜田のように若い彼女を連れてくるものもいた。

そんな女がいると玲は親しみを持ち、その場だけ友達になるのだった。


酔うと桜田は、玲をひざの上に乗せ、皆の前でキスをした。

まるで、見せつけるように。

玲は拒まなかった。

「桜田社長、本当に若い娘が好きよねぇ」
スナックの赤毛のママが、煙草片手に呆れ返った様子で言った。



海釣りで、仲間たちと桜田のクルーザーに乗った時も、桜田は手持ち無沙汰になると玲の胸や尻を触った。

船酔いしてしまった玲が手を振り払い、「止めてよ…」と言っても桜田は笑い事にして取り合わず、仲間たちも見て見ぬ振りをしていた。


夏の間、玲と桜田は何度か二人きりでクルージングに出掛けた。

波の静かな沖合に出ると、桜田はデッキで玲のビキニを剥ぎ取り、好き放題に
した後、狭いキャビンの中で交わった。



桜田が家族をないがしろにしていることは、玲にも分かっていた。


週末がくる度に、海ほたるを経由して南房総の別荘へいっていたのだから。


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