青龍の鎮魂歌
誰か助けて…
声も出せない臆病さが嫌になる。
ここで助けを求められなかったら、私はこの男に犯されておしまいなのに。
こんな危険な状況でさえ、私はただ一人の人に助けを求めようとしている。
「隼人…っ」
気づけば、そう口にしていた。
それに反応した男が、何か口を開こうとしたときだった。
ーーヒュンッ
何かが風を切る音と共に、私の肩への重力が解放された。
周りからは悲鳴のような叫び声があがる。
何が起こったのかはわからないけど、とにかく逃げなきゃと思った。
だから私は後ろも振り返らず、走り出した。
後ろで何が起きていたかも知らずに。
ひたすら、逃げることだけを考えた。