あなたを抱けなかった理由
なぜかその笑顔がやさしくて、ドキドキというより、スーッと私の心の底に焼きつくようなそんな感覚だった。


「じゃあ、気をつけて」と手を振って立ち去る彼を引きとめたのは、そんな笑顔をまた見たかったからかもしれない。







それから、私たちがお互いを好きになるのに時間はかからなかった。

彼が私にやさしい笑顔をくれるのが嬉しくて、私はいつも彼を笑わせることばかり考えていたように思う。



彼はいつも私の話を笑顔で聞いてくれていたし、私も彼を知りたくてたくさん質問をした。




彼の好きなもの
彼の嫌いなもの
彼の嬉しいこと
彼の怒ること





そして――
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