雨夜の密会
私の隣に座る鳴海さん。
風が吹くたびに髪がサラサラと揺れ、甘い香りとタバコの苦い香りが鼻を掠めた。
「新婚生活はどう?」
「まぁまぁ、かな」
「まぁまぁって何?」
鳴海さんはそう言ってクスリと笑う。
一眼レフカメラを大事そうに持つ鳴海さんの手。
色が白くて、筋張っていて、指が長くて綺麗な手。
洗剤荒れしている私の手とは大違い。
「結婚して半年だっけ?」
「うん……」
「ラブラブで楽しい時期なんじゃないの?」
ラブラブか……。
うちには縁遠い話。
世間の仲の良い夫婦は何もしなくても一緒にいるだけで幸せなんだろうな。
砂場で子供を遊ばせながら井戸端会議をしてる人たちのように。