雨夜の密会




「家まで送って行くよ」



写真館の近くまで帰って来た時、鳴海さんがそう言った。



「鳴海さん、お仕事でしょ?写真館で降ろしてくれたら、そこからは歩いて帰れるから大丈夫だよ」


「俺、また……ゴメン……」


「ん?何で謝るの?」


「他の男に車で送られて帰って来たところを旦那さんに見られたらヤバイよね」



鳴海さんはそう言って悲しそうに笑った。


車の中のデジタル時計を見る。


17時30分ーー。


ゴルフだったら、帰りにご飯を食べて帰るはず。


だからまだ帰って来ないから、鳴海さんに送ってもらっても大丈夫だけど……。



「真緒ちゃん?」


「えっ?」


「どうしたの?」



その時、フロントガラスにポツポツと水滴が落ちてきた。



「雨かよ……」



そう呟くように言った鳴海さん。


ポツポツだった雨が激しく降り始めるのに時間はかからなかった。


本降りの雨。


さっきまで晴れていた空は真っ暗。




< 37 / 139 >

この作品をシェア

pagetop