雨夜の密会
でも……。
断れなかった。
お見合いをした料亭の庭で散歩をしていた時。
慣れない着物と草履。
何も話さない和臣さんの後ろを付いて歩いてた時に転びそうになった。
それを助けてくれたのが和臣さんで……。
私の身体をギュッと抱きしめくれた。
「大丈夫?」
と、優しい言葉とぎこちない笑顔。
その時、私の胸が“トクン”と高鳴ったのを覚えている。
椅子に座らせてくれ、鼻緒の部分で靴擦れして血が滲んでいた足。
綺麗なハンカチで血を優しく拭き取り、絆創膏を貼っておんぶしてくれた。
広くて温かい背中。
胸が痛いくらいドキドキしていた。
3回目のデートの時、指輪を差し出されプロポーズされ、それからトントン拍子に話が進み結婚した。
幸せな結婚生活を夢見ていたけど……。